そのため、まだ代金は支払っておらず、物件の引き渡しも受けていません。
さて、このような状況で、クーリングオフはできるのでしょうか?
先ほどの事例では、売り主である不動産屋自らが所有する不動産を買ったのであれば、8日以内なら書面により通知をすればクーリングオフができます。
宅建業法では、第37条の2にて、不動産を、不動産業者の事務所以外で不動産業者から買った場合にだけ、限定的にクーリングオフを認めています。
まずは条文を見てみます。
第37条の2 宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地又は建物の売買契約について、当該宅地建物取引業者の事務所その他国土交通省令で定める場所(以下この条において「事務所等」という。)以外の場所において、当該宅地又は建物の買受けの申込みをした者又は売買契約を締結した買主(事務所等において買受けの申込みをし、事務所等以外の場所において売買契約を締結した買主を除く。)は、次に掲げる場合を除き、書面により、当該買受けの申込みの撤回又は当該売買契約の解除(以下この条において「申込みの撤回等」という。)を行うことができる。この場合において、宅地建物取引業者は、申込みの撤回等に伴う損害賠償又は違約金の支払を請求することができない。 1.買受けの申込みをした者又は買主が、国土交通省令の定めるところにより、申込みの撤回等を行うことができる旨及びその申込みの撤回等を行う場合の方法について告げられた場合において、その告げられた日から起算しで8日を経過したとき。
2.申込者等が、当該宅地又は建物の引渡しを受け、かつ、その代金の全部を支払つたとき。
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まずは、赤字部分だけつなげて読んでいくと、意味が通りやすいと思います。
また、青字部分のケースに当たると、クーリングオフができなくなります。
これらをまとめると、次の1から5の全ての要件を満たしている場合には、購入した不動産の契約を撤回(クーリングオフ)できるといえます。
1 売り主である不動産屋自らが所有する不動産を買ったこと ○売主が不動産屋でない場合は、クーリングオフはできません ○不動産屋自らが所有する部件ではなくて、持ち主が別にいる場合の、いわゆる仲介の場合はクーリングオフできません ○「買う」場合のみがクーリングオフの対象であり、「借りる」場合はクーリングオフできません 2 ※事務所以外の場所で購入申込ないし購入契約をしたこと ○呼ばれもしないのに、自分から不動産屋を訪ねて行った場合にはクーリングオフできません ○「自宅に来てくれ」と呼んで、自宅で契約を申込みまたは締結した場合はクーリングオフできません ○モデルハウスのような仮設事務所で契約を申込、または締結した場合、クーリングオフできる場合とできない場合があります 3 書面によりクーリングオフを主張すること ○電話で解約を伝えただけでは、クーリングオフできません 4 不動産屋からクーリングオフができる旨の説明を受けてから8日が過ぎていないこと ○この不動産屋の説明は書面ですることが要求されているので、口頭で説明を受けただけならクーリングオフできる場合があります ○不動産屋のクーリングオフ説明書に不備がある場合※は、8日を過ぎてもクーリングオフできる場合があります 5 代金を全額払っておらず、物件の引き渡しも受けていないこと ○代金を全額払って、かつ、物件の引き渡しも受けてしまうと、クーリングオフはできません |
以上のとおり、不動産購入のクーリングオフは要件が複雑なので、トラブルに巻き込まれたらすぐに専門家に相談すべきでしょう。
参考条文
一 買受けの申込みをした者又は買主の氏名(法人にあつては、その商号又は名称)及び住所
二 売主である宅地建物取引業者の商号又は名称及び住所並びに免許証番号
三 告げられた日から起算して八日を経過する日までの間は、宅地又は建物の引渡しを受け、かつ、その代金の全部を支払つた場合を除き、書面により買受けの申込みの撤回又は売買契約の解除を行うことができること。
四 前号の買受けの申込みの撤回又は売買契約の解除があつたときは、宅地建物取引業者は、その買受けの申込みの撤回又は売買契約の解除に伴う損害賠償又は違約金の支払を請求することができないこと。
五 第三号の買受けの申込みの撤回又は売買契約の解除は、買受けの申込みの撤回又は売買契約の解除を行う旨を記載した書面を発した時に、その効力を生ずること。
六 第三号の買受けの申込みの撤回又は売買契約の解除があつた場合において、その買受けの申込み又は売買契約の締結に際し手付金その他の金銭が支払われているときは、宅地建物取引業者は、遅滞なく、その全額を返還すること。
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