税率が異なる2つの不動産を同一の申請書にて、いわゆる一括申請にて移転登記する場合の税金の端数処理や税額計算方法
税率が1000分の15の土地と、税率が1000分の20の家屋を一括申請にて移転登記する場合の端数処理や税額計算方法
法律・規則・省令等の条文そのものでは、ズバリこのようなケースでの計算方法を規定したものはないようです。
そこで、このようなケースでの登録免許税について、登記先例を交えながら計算の手順を説明します。
@ 税率が異なるため、土地の固定資産評価額と建物の固定資産評価額を合算した後に1000円未満の端数切り捨て(登録免許税法15条及び国税通則法118条1項の切捨処理)をするという、一括申請時の課税標準計算の原則が使えない(なお、この原則についての先例は昭和42年7月26日民三発794第三課長依命通知:同一の申請書で数個の不動産の登記を申請する場合は、各個の不動産の価額について端数計算をしてはならない)。
よって、便宜、土地だけで1000円未満の端数処理、家屋だけで1000円未満の端数処理をする(なお、法律や規則等ではこのような便宜的な計算方法を直接肯定する規定はないようです。ずばりはまっている先例ではないものの、参考先例はこのページの下段参照)。
A 土地、建物の固定資産評価額のそれぞれについて各別に1000円未満の端数処理をしたのち、各別に税率をかける。
B Aまでで計算した土地に関する登録免許税額と、家屋に関する登録免許税額を合算し、その合計額の100円に満たない金額を切捨てる。
100円未満を切り捨てる法文上の根拠は、国税通則法119条となります。
なお、国税通則法119条を見る限り、合算後、端数処理をするのか、合算する前に端数処理を各別にしてから合算するのかは規定がないようです。
しかし、登録免許税法を特別法、国税通則法を一般法ととらえるならば、まずは登録免許税法上の登録免許税を出す=登録免許税法上は100円未満端数処理の概念がないため単純合算をし、その後に国税通則法による100円未満端数処理をすると考えれば実務上の計算方法には一応の筋が通るように思います。
なお、税率が異なる複数の不動産を一通の申請書で移転登記する場合には、課税価格と税率に内訳表示が必要になります。
逆に、税率が同じ不動産であれば、各不動産の課税価格を端数カットしない状態で足した合計額に、1000円未満カットをした金額を申請書の課税価格の欄に記載すればよいということになります。
登録免許税額についても同じで、税率が同じ不動産については、内訳表示は不要です。
当方の見解は、
日本加除出版株式会社「不動産・商業等の登記に関するQ&A登録免許税の実務」(初版)のP5 第2のQ2 「登録免許税法と国税通則法、租税特別措置法との関係」 P9 第2のQ4 「課税標準の価額に端数がある場合」
日本法令「窓口の相談事例にみる事項別不動産登記のQ&A200選」P312
新日本法規 不動産登記先例・判例要旨集P1031、P1032、P1039
その他、登録免許税法、国税通則法、関連規則を参考にしております。
参考条文
登録免許税法 課税標準の金額の端数計算) 第十五条 別表第一に掲げる登記又は登録に係る課税標準の金額を計算する場合において、その全額が千円に満たないときは、これを千円とする。 (定率課税の場合の最低税額) 第十九条 別表第一に掲げる登記又は登録につき同表に掲げる税率を適用して計算した金額が千円に満たない場合には、当該登記又は登録に係る登録免許税の額は、千円とする。 |
国税通則法 (国税の課税標準の端数計算等) (国税の確定金額の端数計算等)
第119条 国税(自動車重量税、印紙税及び附帯税を除く。以下この条において同じ。)の確定金額に100円未満の端数があるとき、又はその全額が100円未満であるときは、その端数金額又はその全額を切り捨てる。
2 政令で定める国税の確定金額については、前項の規定にかかわらず、その確定金額に1円未満の端数があるとき、又はその全額が1円未満であるときは、その端数金額又はその全額を切り捨てる。
3 国税の確定金額を、2以上の納付の期限を定め、一定の金額に分割して納付することとされている場合において、その納付の期限ごとの分割金額に千円未満(前項に規定する国税に係るものについては、1円未満)の端数があるときは、その端数金額は、すべて最初の納付の期限に係る分割金額に合算するものとする。
4 附帯税の確定金額に100円未満の端数があるとき、又はその全額が千円未満(加算税に係るものについては、5千円未満)であるときは、その端数金額又はその全額を切り捨てる。 |
租税特別措置法 (住宅用家屋の所有権の移転登記の税率の軽減)
第七十三条 個人が、昭和五十九年四月一日から平成二十三年三月三十一日までの間に建築後使用されたことのない住宅用家屋又は建築後使用されたことのある住宅用家屋のうち政令で定めるものの取得(売買その他の政令で定める原因によるものに限る。次条第二項において同じ。)をし、当該個人の居住の用に供した場合には、これらの住宅用家屋の所有権の移転の登記に係る登録免許税の税率は、財務省令で定めるところによりこれらの住宅用家屋の取得後一年以内(一年以内に登記ができないことにつき政令で定めるやむを得ない事情がある場合には、政令で定める期間内。次条第二項及び第七十四条において同じ。)に登記を受けるものに限り、登録免許税法第九条
の規定にかかわらず、千分の三とする。
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<昭和42年7月6日会同協議> 数個の建物で、租税特別措置法の軽減措置の適用があるものとないものとを一括して所有権保存の登記を申請する場合には、右の適用建物と非適用建物ごとに分けて、登録免許税法15条によって課税標準の金額を計算し(※)、これらにそれぞれの税率を乗じて得た金額の合計額について同法(登録免許税法)19条を適用するものとする。 ※国税通則法118条1項も適用されるので、いわゆる課税標準の千円未満カットをすること <平成9年1月29日民三第153第三課長通知> 敷地権の表示の登記をした区分建物についてする不動産登記法100条2項の規定による所有権保存登記の登録免許税の算定は、土地及び建物の各課税標準額に所定の各税率を乗じて計算した額を合算した後に、国税通則法119条1項の規定により端数処理をすべきである。 ※国税通則法119条1項は、100円未満の端数カットのこと <登記研究528・185> 土地と租税特別措置法73条(住宅用家屋の所有権の移転登記の税率の軽減)の適用がある建物の所有権移転の登記を同一の申請書で申請する場合の登録免許税の算出方法としては、土地及び建物の課税標準額に各税率を適用して計算した額を合算した後、国税通則法119条の規定による端数処理をすべきである。 |
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