刈田(かりた)さんは、6年前、失業をしたことによって生活費が不足して、サラ金屋の「追い込みファイナンス」から30万円を借りました。
しかし、その後もなかなか仕事が見つからず、借金の返済のめどが立たず、次第に借金はふくれ上がり、ついには100万円までふくらんでしまいました。
そこで、刈田さんは、過酷な取り立てから逃れるために、住民票を移さないまま、広島に住んでいる高校時代の知人の家に居候させてもらうことにしました。
刈田さんの故郷は鹿児島県ですが、知人は広島県に住んでいたため、「追い込みファイナンス」も容易には刈田さんを見つけることはできませんでした。
居候をしてほどなく、刈田さんは知人のいる広島で職を見つけ、しばらく平穏な生活をしていました。
しかし、広島に移ってから6年ほどたったころ、「追い込みファイナンス」の取り立て屋が押し掛けてきたのです。
「おう!刈田!6年間も踏み倒し続けていたお前の借金は、今は280万円になってるぞ!金利30%で6年分、元金の180%の利息をつけて、今すぐ払え!……っといいたいところだが、俺も鬼じゃあないから、今日とりあえず5000円を支払うのであれば、残りの借金は半額に負けてやる。さあ、5000円だけ払ってくれ。」
刈田さんは、どこまでも追いかけてくる「追い込みファイナンス」からは、到底逃れられないと思い、しかも、半額で勘弁してくれるなら払ってしまおうと思いました。
「追い込みファイナンスさん、友達の家にしょっちゅう取り立てに来られても困るので、お支払いしようと思います。半額に負けてくれるのであれば、毎月ちょっとづつ払います。」
そう伝えると、「追い込みファイナンス」の取り立て屋は、
「じゃあ、280万円の借金のうち、140万円を支払いますという念書を書いてくれ。そうすれば残りは勘弁してやるよ。こんなサービスをしょっちゅうやってたら、社長からどやされちゃうんだけどな。まあ、払えない人から無理やり取り立てるほどおれは鬼じゃあないんだよ」っといいました。
刈田さんは、(サラ金屋にも、いい人はいるのだな)っと思い、念書にサインをしてしまいました。
「追い込みファイナンス」は、刈田さんがサインを終えると、なぜか晴れやかな表情をしていました。
実は、借金を半額にしてやるという誘いには、罠が仕掛けられていたのです。
刈田さんは、本来支払わないで良いお金を、まんまと支払わされることになってしまったのです。
どういうことなのでしょうか?
世の中には、時効という制度があります。
これは、長い間権利の行使がなされなかったときは、その権利を消滅させることによって、社会秩序を安定化させようという趣旨で作られた制度です。
人間は、5年も10年も前のことを正確に記憶することは困難です。
そのため、民法という法律によって、権利の行使期間には上限が設けられたのです。
具体的には、飲み屋の代金請求は1年、サラ金屋からの請求は5年というように、権利の種類ごとに、消滅時効期間が定められています。
しかし、この消滅時効期間が経過しても、請求されるがままにお金を1円でも支払ってしまうと、成立していた時効は、無効になってしまうのです。
結局、今回の件では、すでに時効消滅して全額支払わないでよかった借金を、まんまと支払わされることになってしまったのです。
「借金を半額に負けてやるから…」などという甘い誘いには、罠が隠されていたのです。
日ごろから、甘い話には何か裏があるものだと考えていないと、思わぬ損失を被ることがあるのです。
所長 司法書士
〒101−0042
東京都千代田区神田東松下町46番地
大木ビル3階
営業時間 10時から18時
TEL 03−5207−9393
FAX 03−5207−9394
Eメール
shiho-syoshi_at_home@hop.ocn.ne.jp
メールによる無料法律相談(債務整理・借金問題用)はここをクリック
メールによる無料法律相談(債務整理・借金問題以外)はこちら