世の中には、結婚詐欺という犯罪があります。
しかし、この名称は法律(刑法)上の正式名称ではありません。
世の中でいうところの結婚詐欺が犯罪として成立するためには、金品をだまし取ることまでもが、刑法上要求されているのです。
単純に、ウソをついて結婚をしただけでは、犯罪にはならないのです。
例えば、本当は無職なのに、実は銀座に飲食店を5件構えている会社の社長をやっている、別荘も房総半島にあって、月一回はクルーザーに乗っているんだよ、芸能人とも友達なんだ、などとウソをいって結婚しても、それだけでは犯罪にはならないのです。
一般的な感覚からすると、不当な感じがします。
結婚は人生最大の思い出になりうるものです。
その結婚がウソによって台無しにされるなんて、許しがたいことです。
何年か、牢屋に入って罰を受けるべきだと考える人も多いでしょう。
しかし、日本の法律では、ウソをついて結婚をしただけでは、牢屋に入れて、罰を与えることはできないのです。
損害賠償金を払わすことはできても、犯罪としての罰を与えることはできないのです。
どうしてなのでしょうか?
その答えは、相手にウソをついて結婚をさせる行為を罰する法律がないからです。
ウソをついても、金品をだまし取らない限り、詐欺には該当しないのです。
日本をはじめ、多くの国では、罪刑法定主義という思想を採用しており、国家が国民に罰(刑事罰)を与えるためには、それぞれの悪事が犯罪になる、という明確な法律が必要だとされています。
道徳的に許されないからといって、当然に犯罪になるわけではないのです。
この罪刑法定主義という思想は、国家が国民を不当に弾圧しないために必要な思想です。
そして、日本では、ウソをついて結婚をさせる行為は、犯罪として定められていないのです。
また、詐欺罪についても、ウソをついて結婚をする行為を罰するとは定めていません。
実際の条文はこうなっています。
(詐欺)
第246条 人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
結婚という行為そのものには、当然には財産の移転がからみません(ゆくゆくはおかあちゃんに財布をにぎられることになるのでしょうが…)。
結婚をしたからといって、自分の持っている財布や銀行口座から自動的に相手方に金銭が移動することはないでしょうし、当然に、財産上の利益が生じるともいい難いでしょう。
したがって、財産の移転がなく、財産上の利益を得ていない以上、ウソをついて結婚をさせたとしても、犯罪として罰せられることはないのです。
このような、いわば犯罪の隙間のような行為は、民法という法律において、不法行為として、損害賠償請求ができるにとどまるのです。
本来、このような法律の隙間があった場合には、国会議員が国民の意見を聞いた上で、新たな立法をすべきなのでしょうが、現実には、国会議員が国民の意見を迅速に反映させる立法をすることは、それほど多いとはいえないのが現状です。
刑法や、民法といった、日本の歴史上古くからある法律でさえ、100年たっても不備が直されていないことも多いのです。
しかしながら、法律を作る側も完璧たりえないので、法律の隙間をついて悪事を行うことは、絶対に慎まなければなりません。
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