横月(よこづき)君は、あまり上手ではないものの、絵を描くのが大好きでした。
今日もルンルン気分で筆を走らせていました。
キャンバスには下書きも終わって、いよいよ本格的に完成させようというところで、横月君はオシッコをしたくなったのでトイレに行きました。
横月君が公園のトイレにむかったところ、2つあるトイレのうち、ひとつが故障しており、トイレには列ができていました。
そのため、横月君は15分ほどトイレ休憩を余儀なくされました。
横月君がトイレから戻ると、見知らぬおじさんが横月君のキャンバスに絵を描いているではありませんか!!
しかしながら、その絵はまさに芸術そのもの。
横月君はみとれていましたが、我に返りこう言いました。
「おじさん、誰?」
そのおじさんは「私は画家のゴッフォというものだ。突然頭にイメージがひらめいたから、何か書くものを探していたら、ちょうどこのキャンバスがあったから拝借したのだ。とても上手く描けたから、もらっていくぞ」っと言ってきました。
横月君は、
「おじさん、そのキャンバスは僕のです。トイレに行くために絵から離れていただけなんです。返して下さい」っと言い返しましたが、おじさんは返してくれません。
よほどその絵の出来ばえに満足しているのでしょう。
おじさんは、ついに横月君を振り切り、その絵を持って帰ってしまいました。
それから、2ヶ月後、横月君が絵の展示会に行くと、なにやら見覚えのある絵があります。
そう、ゴッフォおじさんに持っていかれた絵が飾ってあったのです。
しかも、その絵には200万円の値段が付いていたのです!!
横月君は絵のそばにいたゴッフォおじさんに「絵を返してください」と言い寄りました。
しかし、ゴッフォおじさんは首を横に振ります。
さて、この絵は法律的にはどちらのものになるのでしょうか?
民法246条
他人の動産に工作を加えた者があるときは、その加工物の所有権は、材料の所有者に帰属する。ただし、工作によって生じた価格が材料の価格を著しく超えるときは、加工者がその加工物の所有権を取得する。
今回の絵は、横月君のキャンバスに、横月君の絵具を使って完成されたので、材料の所有者である横月君のものとも一見考えられます。
しかし、民法246条の「ただし」よりあとに、「工作によって生じた価格が材料の価格を著しく超えるときは、加工者がその加工物の所有権を取得する。」とあります。
今回のケースは、芸術家のゴッフォさんが描いたがゆえに200万円の値段がついたといえそうですから、民法ではこの絵はゴッフォさんの所有物になります。
横月君は、紙代と絵具代と若干の慰謝料を請求できるにとどまるといえそうです。
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