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債務整理の理論

10 遺産分割・債務整理・借金相談事件に関連する最高裁平成21年1月22日判決について(信用金庫・銀行の預金口座開示義務)


この判決が出るまで、信用金庫や銀行が、預金口座を顧客に開示する法的義務を負うかどうかについて、明確な法律がないこともあり、判断は統一されていませんでした。

信用金庫や銀行は、貸金業者とは法的に異なり(貸金業法第2条1項2号、信用金庫法第53条2項、銀行法第2条2項1号)、条文上は、貸金業法及び貸金業法に付随する規則、行政のガイドライン等の制約を直接には受けません。

信用金庫や銀行には、サラ金と全く同じ高金利貸付を行っていても、貸金業法の定める取立て規制等が直接かかるわけではないのです(この貸金業法の信用金庫・銀行除外規定は、法の下の平等に違反している可能性があるので、無効の可能性は低くないものと思われます)。


参考条文 赤字部分を読むと、信用金庫や銀行には貸金業法が直接は適用されないことが読み取れます。


貸金業法
第2条 この法律において「貸金業」とは、金銭の貸付け又は金銭の貸借の媒介(手形の割引、売渡担保その他これらに類する方法によつてする金銭の交付又は当該方法によつてする金銭の授受の媒介を含む。以下これらを総称して単に「貸付け」という。)で業として行うものをいう。ただし、次に掲げるものを除く。
1.国又は地方公共団体が行うもの
2.貸付けを業として行うにつき他の法律に特別の規定のある者が行うもの
3.物品の売買、運送、保管又は売買の媒介を業とする者がその取引に付随して行うもの
4.事業者がその従業者に対して行うもの
5.前各号に掲げるもののほか、資金需要者等の利益を損なうおそれがないと認められる貸付けを行う者で政令で定めるものが行うもの


信用金庫法
第53条 信用金庫は、次に掲げる業務を行うことができる。
1.預金又は定期積金の受入れ
2.会員に対する資金の貸付け
3.会員のためにする手形の割引
4.為替取引

2 信用金庫は、政令で定めるところにより、前項第2号及び第3号に掲げる業務の遂行を妨げない限度において、地方公共団体、金融機関その他会員以外の者に対して資金の貸付け(手形の割引を含む。以下この章において同じ。)をすることができる。


銀行法
第二条  この法律において「銀行」とは、第四条第一項の内閣総理大臣の免許を受けて銀行業を営む者をいう。
2  この法律において「銀行業」とは、次に掲げる行為のいずれかを行う営業をいう。
一  預金又は定期積金の受入れと資金の貸付け又は手形の割引とを併せ行うこと。
二  為替取引を行うこと。


そのため、貸金業法に定めてあり、サラ金屋には拘束力のあった取引履歴の開示義務(貸金業法第19条の2)を、信用金庫や銀行も負うかという点については、法的に争う余地があったのです。

しかし、信用金庫や銀行(これらを最高裁は金融機関という呼称をしています)についても、預金契約の付随義務として、預金口座の開示義務がある旨最高裁は判断しました。

この最高裁平成21年1月22日判決では、信用金庫や銀行といった金融機関にも貸金業法が適用されるか否かという点には一切触れていませんが、民法645条,656条、及び預金契約に基づき、信用金庫(金融機関)は取引履歴を開示する義務を負うものと判断しました。


そこで、まずは最高裁平成21年1月22日判決を見てみます(一部省略あり。上告人を信用金庫、被上告人を、預金者の相続人と言い換えてあります)。

預金契約は,預金者が金融機関に金銭の保管を委託し,金融機関は預金者に同種,同額の金銭を返還する義務を負うことを内容とするものであるから,消費寄託の性質を有するものである。
しかし,預金契約に基づいて金融機関の処理すべき事務には,預金の返還だけでなく,振込入金の受入れ,各種料金の自動支払,利息
の入金,定期預金の自動継続処理等,委任事務ないし準委任事務(以下「委任事務等」という。)の性質を有するものも多く含まれている。
委任契約や準委任契約においては,受任者は委任者の求めに応じて委任事務等の処理の状況を報告すべき義務を負うが(民法645条,656条),これは,委任者にとって,委任事務等の処理状況を正確に把握するとともに,受任者の事務処理の適切さについて判断するためには,受任者から適宜上記報告を受けることが必要不可欠であるためと解される。
このことは預金契約において金融機関が処理すべき事務についても同様であり,預金口座の取引経過は,預金契約に基づく金融機関の事務処理を反映したものであるから,預金者にとって,その開示を受けることが,預金の増減とその原因等について正確に把握するとともに,金融機関の事務処理の適切さについて判断するために必要不可欠であるということができる。
したがって,金融機関は,預金契約に基づき,預金者の求めに応じて預金口座の取引経過を開示すべき義務を負うと解するのが相当である。

そして,預金者が死亡した場合,その共同相続人の一人は,預金債権の一部を相続により取得するにとどまるが,これとは別に,共同相続人全員に帰属する預金契約上の地位に基づき,被相続人名義の預金口座についてその取引経過の開示を求める権利を単独で行使することができる(同法264条,252条ただし書)というべきであり,他の共同相続人全員の同意がないことは上記権利行使を妨げる理由となるものではない。
信用金庫は,共同相続人の一人に被相続人名義の預金口座の取引経過を開示することが預金者のプライバシーを侵害し,金融機関の守秘義務に違反すると主張するが,開示の相手方が共同相続人にとどまる限り,そのような問題が生ずる余地はないというべきである。
なお,開示請求の態様,開示を求める対象ないし範囲等によっては,預金口座の取引経過の開示請求が権利の濫用に当たり許されない場合があると考えられるが,預金者の相続人の本訴請求について権利の濫用に当たるような事情はうかがわれない。


かなり長いのですが、青字部分だけを読み取れば、判決の要旨はわかります。

ざっといえば、預金口座の取引経過は、預金者が預金の増減を知るためには不可欠であるから、金融機関は預金契約上の義務として開示せよ、ということです。

一般市民感覚では、このようなあまりにも当然のことについても、最高裁まで争わなければならないのが日本の消費者保護の惨状です。

「金融機関は預金口座を開示しなければならない」という明確な法律がなければ、預金口座を開示しない、という金融機関の態度にも問題があります。

しかしながら、今回の最高裁判決で、信用金庫も銀行も、預金口座を顧客に開示する義務があると明確に判断されたため、今までよりは、一般市民の債務整理・借金相談・遺産分割等がスムーズに行われるようになるといえます。




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