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債務整理の理論

5 債務整理・過払い事件における最高裁平成20年1月18日判決について


最高裁は、平成19年2月13日判決にて、既に発生した過払い金を、その後の新たな借入金の返済に当然に(何らの行動も要さずに)充てることは原則として認めないものと判断しました。


その一方で、例外的に、過払い金がその後の借入金に対する返済に、当然に(何らの行動も要さずに)充てられるケース・要件を、平成19年6月7日判決、平成19年7月19日判決にて示しました。

その具体的な要件を整理すると、次の場合には、過払い金と、貸付金の差引き清算処理(一連計算・連続計算)ができることとされています。

@同一の基本契約に基づく一連の取引の場合
A基本契約に基づく一連の取引ではないが、基本契約があるかのごとく、将来の取引が想定される場合
B当事者間に過払金を新たな借入金債務に充当する旨の合意が存在するとき
C途中で完済があっても、実質的に一個の連続した貸付取引である場合

そして、最高裁は、これらの基準の他に、最高裁平成20年1月18日判決にて、新たな基準を示しました。

まずは、最高裁平成20年1月18日判決を見てみます(一部省略あり)。

<事案の概要>
1 本件は,上告人を貸主,被上告人を借主としていわゆるリボルビング方式の金銭消費貸借に係る二つの基本契約が締結され,各基本契約に基づいて取引が行われたところ,借主が,上記取引を一連のものとみて,これに係る各弁済金のうち利息制限法1条1項所定の利息の制限額を超えて利息として支払われた部分(以下「制限超過部分」という。)を元本に充当すると過払金(不当利得)が生じていると主張して,貸主に対し過払金の返還を請求する事案である。最初に締結された基本契約に基づく取引について生じた過払金をその後に締結された基本契約に基づく取引に係る債務に充当することができるかどうかが争われている。

<確定した事実関係>
2 原審が確定した事実関係の概要は次のとおりである。
(1) 貸主は,貸金業の規制等に関する法律(平成18年法律第115号により法律の題名が貸金業法と改められた。)3条所定の登録を受けた貸金業者である。

(2) 借主は,貸主との間で,平成2年9月3日,次の約定により,継続的に金銭の借入れとその弁済が繰り返されるリボルビング式金銭消費貸借に係る基本契約(以下「基本契約1」という。)を締結した。
ア融資限度額50万円(借主はこの範囲で自由に借増しができる。)
イ利息年29.2%
ウ遅延損害金年36.5%
エ返済日毎月1日
オ返済方法借入時の借入残高に応じた一定額以上を毎月弁済日までに支払う。

(3) 借主は,平成2年9月3日から平成7年7月19日までの間,第1審判決別紙法定金利計算書1の番号1から74までの年月日欄記載の日に借入金額欄又は弁済額欄記載のとおり金銭の借入れと弁済を行った。
これにより,基本契約1の約定利率による利息及び元金は,平成7年7月19日に完済された計算となる。
なお,この間の弁済につき,制限超過部分を元本に充当されたものとして計算をした残元金は,上記法定金利計算書1の番号1から74までの残元金欄記載のとおりであって,平成7年7月19日の時点における過払金は42万9657円となる。

(4) 借主は,貸主との間で,平成10年6月8日,次の約定により,継続的に金銭の借入れとその弁済が繰り返されるリボルビング式金銭消費貸借に係る基本契約(以下「基本契約2」という。)を締結した。
ア融資限度額50万円(借主はこの範囲で自由に借増しができる。)
イ利息年29.95%
ウ遅延損害金年39.5%
エ返済日毎月27日
オ返済方法借入時の借入残高に応じた一定額以上を毎月弁済日までに支払う。

(5) 借主は,平成10年6月8日から平成17年7月7日までの間,第1審判決別紙法定金利計算書2の番号1から146までの年月日欄記載の日に借入金額欄又は弁済額欄記載のとおり金銭の借入れと弁済を行った。

(6) 貸主は,基本契約2の契約書の作成に際し,借主から,借入申込書の提出を受け,健康保険証のコピーなどを徴求した上,借主の勤務先に電話して在籍の確認をした。
上記契約書作成に際しての審査項目のうち,借主の融資希望額,勤務先,雇用形態,給与の支給形態,業種及び職種,住居の種類並びに家族の構成は,基本契約1を締結したときのものと同一であり,年収額及び他に利用中のローンの件数,金額についても大差はない状況であった。また,基本契約2を取り扱った貸主の支店は基本契約1を取り扱った支店と同一であった。

<最高裁判所の判断>
(1) 同一の貸主と借主との間で継続的に貸付けとその弁済が繰り返されることを予定した基本契約が締結され,この基本契約に基づく取引に係る債務の各弁済金のうち制限超過部分を元本に充当すると過払金が発生するに至ったが,過払金が発生することとなった弁済がされた時点においては両者の間に他の債務が存在せず,その後に,両者の間で改めて金銭消費貸借に係る基本契約が締結され,この基本契約に基づく取引に係る債務が発生した場合には,第1の基本契約に基づく取引により発生した過払金を新たな借入金債務に充当する旨の合意が存在するなど特段の事情がない限り,第1の基本契約に基づく取引に係る過払金は,第2の基本契約に基づく取引に係る債務には充当されないと解するのが相当である(最高裁平成18年(受)第1187号同19年2月13日第三小法廷判決・民集61巻1号182頁,最高裁平成18年(受)第1887号同19年6月7日第一小法廷判決・民集61巻4号1537頁参照)。
そして,第1の基本契約に基づく貸付け及び弁済が反復継続して行われた期間の長さやこれに基づく最終の弁済から第2の基本契約に基づく最初の貸付けまでの期間,第1の基本契約についての契約書の返還の有無,借入れ等に際し使用されるカードが発行されている場合にはその失効手続の有無,第1の基本契約に基づく最終の弁済から第2の基本契約が締結されるまでの間における貸主と借主との接触の状況,第2の基本契約が締結されるに至る経緯,第1と第2の各基本契約における利率等の契約条件の異同等の事情を考慮して,第1の基本契約に基づく債務が完済されてもこれが終了せず,第1の基本契約に基づく取引と第2の基本契約に基づく取引とが事実上1個の連続した貸付取引であると評価することができる場合には,上記合意が存在するものと解するのが相当である。

(2) これを本件についてみると,前記事実関係によれば,基本契約1に基づく取引について,約定利率に基づく計算上は元利金が完済される結果となった平成7年7月19日の時点において,各弁済金のうち制限超過部分を元本に充当すると過払金42万9657円が発生したが,その当時上告人と被上告人との間には他の借入金債務は存在せず,その後約3年を経過した平成10年6月8日になって改めて基本契約2が締結され,それ以降は基本契約2に基づく取引が行われたというのであるから,基本契約1に基づく取引と基本契約2に基づく取引とが事実上1個の連続した貸付取引であると評価することができる場合に当たるなど特段の事情のない限り,基本契約1に基づく取引により生じた過払金は,基本契約2に基づく取引に係る債務には充当されないというべきである。
原審は,基本契約1と基本契約2は,単に借増しと弁済が繰り返される一連の貸借取引を定めたものであり,実質上一体として1個のリボルビング方式の金銭消費貸借契約を成すと解するのが相当であることを根拠として,基本契約1に基づく取引により生じた過払金が基本契約2に基づく取引に係る債務に当然に充当されるとする。
しかし,本件においては,基本契約1に基づく最終の弁済から約3年間が経過した後に改めて基本契約2が締結されたこと,基本契約1と基本契約2は利息,遅延損害金の利率を異にすることなど前記の事実関係を前提とすれば,原審の認定した事情のみからは,上記特段の事情が存在すると解することはできない。


最高裁は、複数の基本契約が存在する場合には、
第1の基本契約に基づく貸付け及び弁済が反復継続して行われた期間の長さ
最終の弁済から第2の基本契約に基づく最初の貸付けまでの期間
第1の基本契約についての契約書の返還の有無
借入れ等に際し使用されるカードが発行されている場合にはその失効手続の有無
第1の基本契約に基づく最終の弁済から第2の基本契約が締結されるまでの間における貸主と借主との接触の状況
第2の基本契約が締結されるに至る経緯,第1と第2の各基本契約における利率等の契約条件の異同等

を総合考慮して、異なる基本契約に基づく取引が、事実上一個の連続した取引である場合には、過払い金と、貸付金の差引き清算処理(一連計算・連続計算)ができるものとしており、今回の事例では、契約条件が異なる点や、取引の中断期間が長かった点を理由に、事実上一個の取引であるとはいえない旨判断しています。

今回の事例では、平成2年9月3日から取引を開始し、平成7年7月19日にいったん完済して、その、約3年後の平成10年6月8日から取引が再開され、平成17年7月7日に再び完済しています(平成2年9月3日からの取引を取引1とし、平成10年6月8日からの取引を取引2とします)。

また、取引1と取引2では、金利がそれぞれ29.2%・29.95%、遅延損害金利率がそれぞれ36.5%・39.5%、返済期日がそれぞれ1日・27日と異なっており、共通する部分としては、返済方法が、借入時の借入残高に応じた一定額以上を毎月弁済日までに支払ういわゆる残高スライドリボルビング方式となっていました。

そして、最高裁はこのような事実関係のもとでは、取引1と取引2が事実上一体的であるとはいえないため、取引1において発生した過払い金を、取引2における貸付金に充当することはできないと判断しました。

この判断によると、第1取引の過払い金は、時効消滅することになります。

過払い金の消滅時効は、最終の取引日から10年とされているからです。

したがって、今回の最高裁平成20年1月18日判決によって、途中で意を決して完済にこぎつけた借主の方が、絶えず借金返済に苦しんでおり、一度たりとも完済するには至らなかった借主よりも、不当に保護が弱くなるという結論にいたったのです。

これは、保護法益の観点からは一切説明のできない、とても不当な判断であるといえます。

まじめに返済をし、借金生活・借金地獄から決別した者が、よりいっそう保護が弱くなる…

明らかに結論が妥当ではありません。

最高裁は、もう一度、保護法益や、貸金業者の不当利益の蓄積排除の観点から、過払い金と貸付金の充当法理を検討すべきです。

最後に、現時点における、最高裁が判断した、「過払い金と、貸付金の差引き清算処理(一連計算・連続計算)」ができる場合をまとめます。

@同一の基本契約に基づく一連の取引の場合
A基本契約に基づく一連の取引ではないが、基本契約があるかのごとく、将来の取引が想定される場合
B当事者間に過払金を新たな借入金債務に充当する旨の合意が存在するとき
C途中で完済があっても、実質的に一個の連続した貸付取引※である場合
a 第1の基本契約に基づく貸付け及び弁済が反復継続して行われた期間の長さ
  b 最終の弁済から第2の基本契約に基づく最初の貸付けまでの期間
  c 第1の基本契約についての契約書の返還の有無
  d 借入れ等に際し使用されるカードが発行されている場合にはその失効手続の有無
  e 第1の基本契約に基づく最終の弁済から第2の基本契約が締結されるまでの間における貸主と借主との接触の状況
  f 第2の基本契約が締結されるに至る経緯,第1と第2の各基本契約における利率等の契約条件の異同

  g その他取引が事実上一体と判断できるような事実関係
   を総合考慮して、実質的に一個の連続した貸付取引であるかを判断する。

現在の過払い金返還訴訟では、これらの不利な材料を打ち消しつつ、こちらに有利な証拠や証言を積み重ねて、どうにか過払い金の連続計算を認めさせるべく激しく争っています。

しかしながら、現状では、取引の中断期間が3年を越えると、過払い金の連続計算が否定されることも多くなってきています(なお、当事務所では、取引の中断期間が3年を越えていても一連計算を認めてもらった判決もあります(当事務所勝訴判決集))。

そのため、判決では不利な結論になりそうな場合は、中間的な金額による和解を検討せざるを得ない状況ですが、当事務所では、これからも最高裁の不当な見解を変えるべく、日々裁判所で主張をぶつけていきます。




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