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債務整理の理論

8 債務整理・過払い事件における最高裁平成21年1月22日判決について


債務整理・過払い事件において、過払金の消滅時効の起算点はいつからか、という争点がありました。

過払金の消滅時効の起算点については、

@過払金が生じた瞬間から起算する、という個別進行説と、

A連続している取引が完済などにより終了した時とする、最終取引日説

の二つがありました。

概ね全国の裁判所は、過払金の消滅時効の起算点は、連続している取引が終了した日からという判断をしていましたが、高等裁判所レベルでも判決は統一されていませんでした。

しかし、最高裁平成21年1月22日判決により、過払金の消滅時効の起算点は、「連続している取引が終了した日」に統一されました。

以下、実際の判決を見てみます(一部省略)。


1 本件は,被上告人が,貸金業者である上告人に対し,基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引に係る弁済金のうち利息制限法(平成18年法律第115号による改正前のもの。以下同じ。)1条1項所定の利息の制限額を超えて利息として支払われた部分を元本に充当すると,過払金が発生していると主張して,不当利得返還請求権に基づき,その支払を求める事案である。
上告人は,上記不当利得返還請求権の一部については,過払金の発生時から10年が経過し,消滅時効が完成していると主張して,これを援用した。
2 原審の適法に確定した事実関係の概要は,次のとおりである。
貸主である上告人と借主である被上告人は,1個の基本契約に基づき,第1審判決別紙「法定金利計算書G」の「借入金額」欄及び「弁済額」欄記載のとおり,昭和57年8月10日から平成17年3月2日にかけて,継続的に借入れと返済を繰り返す金銭消費貸借取引を行った。
上記の借入れは,借入金の残元金が一定額となる限度で繰り返し行われ,また,上記の返済は,借入金債務の残額の合計を基準として各回の最低返済額を設定して毎月行われるものであった。
上記基本契約は,基本契約に基づく借入金債務につき利息制限法1条1項所定の利息の制限額を超える利息の弁済により過払金が発生した場合には,弁済当時他の借入金債務が存在しなければ上記過払金をその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意(以下「過払金充当合意」という。)を含むものであった。
3 このような過払金充当合意においては,新たな借入金債務の発生が見込まれる限り,過払金を同債務に充当することとし,借主が過払金に係る不当利得返還請求権(以下「過払金返還請求権」という。)を行使することは通常想定されていないものというべきである。
したがって,一般に,過払金充当合意には,借主は基本契約に基づく新たな借入金債務の発生が見込まれなくなった時点,すなわち,基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引が終了した時点で過払金が存在していればその返還請求権を行使することとし,それまでは過払金が発生してもその都度その返還を請求することはせず,これをそのままその後に発生する新たな借入金債務への充当の用に供するという趣旨が含まれているものと解するのが相当である。
そうすると,過払金充当合意を含む基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引においては,同取引継続中は過払金充当合意が法律上の障害となるというべきであり,過払金返還請求権の行使を妨げるものと解するのが相当である。
借主は,基本契約に基づく借入れを継続する義務を負うものではないので,一方的に基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引を終了させ,その時点において存在する過払金の返還を請求することができるが,それをもって過払金発生時からその返還請求権の消滅時効が進行すると解することは,借主に対し,過払金が発生すればその返還請求権の消滅時効期間経過前に貸主との間の継続的な金銭消費貸借取引を終了させることを求めるに等しく,過払金充当合意を含む基本契約の趣旨に反することとなるから,そのように解することはできない(最高裁平成17年(受)第844号同19年4月24日第三小法廷判決・民集61巻3号1073頁,最高裁平成17年(受)第1519号同19年6月7日第一小法廷判決・裁判集民事224号479頁参照)。

したがって,過払金充当合意を含む基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引においては,同取引により発生した過払金返還請求権の消滅時効は,過払金返還請求権の行使について上記内容と異なる合意が存在するなど特段の事情がない限り,同取引が終了した時点から進行するものと解するのが相当である。



少しわかりにくいので、解説をします。

最高裁は、「新たな借入金債務の発生が見込まれる限り,過払金を同債務に充当することとし,借主が過払金に係る不当利得返還請求権を行使することは通常想定されていない」と判断しました。

さらに、過払金の発生の都度消滅時効が進行すると解釈すると、借主としては取引を継続したいと考えているにもかかわらず、過払金を時効消滅させないためには過払い金の返還請求をせざるを得なくなり、この返還請求を行えば、今後の取引は打ち切りとなるであろうから、このような解釈をすることは、過払金充当合意を含み、将来の取引を想定している基本契約の趣旨とは相反しているから認められないとしました。

そして、途中で完済のない連続的な取引に関しては、最高裁平成19年6月7日判決により、既に発生した過払い金は、将来の貸付金に充当される旨の合意があったものとされているので、結局、連続的な取引においては、最終取引日まで過払い金の消滅時効は進行しない、という結論になります。

この判決が出るまでは、過払いとなってからの取引期間が10年を超えており、高額の過払金が発生している事件では、貸金業者は控訴してでも時効の主張をしてきたので、解決までの期間が長期化することもしばしばでしたが、今回の判決により、裁判期間の大幅な短縮が見込めます。

久しぶりに消費者保護・債務者保護の判決が出たといえます。




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