定款自治・定款自治の範囲、定款に定めれば有効になるものならないものはどうなっているのか。我が国の法律は、法律の規定を変更することを許さない強行法規なのか、合意により法律の定めと異なる定めをできる任意法規なのかが条文上明らかになっていないという重大な欠陥があります。法律の第1条とか2条あたりに、「合意により別段の定めができると記載のないものは別段の定めができないものとする」旨の定めがあるべきでしょう。
12 定款自治・定款自治の範囲、定款で定めれば会社法の規定を変更できるもの・できないもの
商法から会社法に会社の規定が移管・新設されたことに伴い、定款自治の範囲が広まったとされています。
しかし、定款で定めれば、会社法の条文とは違う設計をなんでも自由に決められたら、不都合が生じるのは歴然です。
例えば、世界的上場会社の代表取締役を株主総会で選ばないで、定款で定めればうちの孫にサイコロをふらせて決めたりとかできるの?
っとか、取締役には経営責任だけ負わせて、実質的な会社の支配は株主がしたいから、定款で定めて取締役から業務執行権を完全に剥奪したりできるの?
っとか、いろいろあります。
上記のような極端な例だけでなく、取締役会を設置している会社では、代表取締役は取締役会で選ぶと会社法に書いてあるけど、これを、株主総会で代表取締役を選べるという定めはできるのか、っとか、条文上は判然としない争点が多数あります。
ここで、一般的に有力とされている解釈法は、「ただし、定款又は株主総会の決議によって、その任期を短縮することを妨げない。 」とか、「定款によって、同項の任期を選任後十年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで伸長することを妨げない。
」っとか、「定款に別段の定めがある場合を除き、取締役の過半数をもって決定する。」のように、定款で別段の定めができる旨記載がある場合にだけ、別の定めができるとし、書いてないのであれば、定款をもってしても法律の規定を変更できないことと考えているようです。
わかりやすめの例をあげれば、
(会計参与の資格等)
第三百三十三条 会計参与は、公認会計士若しくは監査法人又は税理士若しくは税理士法人でなければならない。
これを定款で定めれば、公認会計士や税理士じゃない者でも会計参与にできるなんて、ちょっと考え難いですよね。
会社法の条文に、定款で定めれば会社法の条文と異なる設計をできる旨書いてないならば、そこには定款自治が原則及ばないと理解してよいでしょう。
原則という言葉を使ったのは、会社法にそもそも記載のない株主の権利として、
例えば「株主は代表取締役と気軽に会話をしてもよいか」という点について、
会社法には言及がない、故に当然、定款で定めれば会社法の条文と異なる設計をできる旨も会社法に書いてないのだから、
定款に「株主は代表取締役と気軽に会話をしてもよい」っと定めても定款自治が及ばず、
「株主は代表取締役と気軽に会話をしてはいけない」っと解釈すべきでないだろうという観点からです。
でも、定款で定めたからといって、「当会社の株主は、当会社の商品を好きなだけ持ち去ってよく、会社はこれを承認する」というような定めは、いかにも無効とされるべきであり、会社法に定めのない部分については、ケースによって定款で定めたとしても有効だったり、無効だったりが割れることとなりそうです。
定款で変更できないものだけを限定列挙する方が、立法政策的には明瞭で正しかったのではないでしょうか。
定款で、法律の条文とは別の定めをできるともできないとも書いてない我が国の会社法の規定ぶりには欠陥があるといえるでしょう。
結論:会社法の条文に言及があるものの、定款で別段の定めをできる旨が書いてないもの→強行法規なので定款で原則自由に変更できない
会社法の条文に言及がないものは、定款で定めをしても、合法性、合理性、妥当性次第で有効にも無効にもなりうると思われる
先の例でいくと、会社法349条3項に
「株式会社(取締役会設置会社を除く。)は、定款、定款の定めに基づく取締役の互選又は株主総会の決議によって、取締役の中から代表取締役を定めることができる。
」とあるものの、代表取締役をサイコロで選ぶ方法は記載されておらず、かつ、定款で別の定めができる旨書いてないから、できないと解すべきであろうし、取締役会設置会社の場合は、会社法362条3項に「取締役会は、取締役の中から代表取締役を選定しなければならない。」と条文があり、かつ、定款で別の定めができる旨書いてないから、取締役会設置会社では代表取締役を株主総会では選べない、っとなりそうですが、登記情報539号18頁に、会社法律案担当者が、取締役会設置会社においても定款に定めることによって、代表取締役を株主総会にて定める方法を是認しているようです。
また、会社法295条も定款自治の範囲に言及があります。
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