ながらく役員変更登記をしないで、そののちに会社法が施行された場合、実務的にはどのような対応が考えられるか、また、その際の添付書類等について考察します。


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商業登記ワンポイントメモ

19 会社法施行前後の役員変更・役員任期・取締役会廃止などなどの添付書類や実務一例

とある株式会社。昭和60年ごろに設立された会社なので、当然に取締役会が設置されており、監査役もいる。

決算期は、7月末。

最後に登記がなされたのが、平成15年4月20日の、全役員重任登記。

株券は実際には発行したことがない。

いまは、平成27年9月10日です。

さて、どうしたもんか。。。

株主が一人しかいない会社では、会社法施行後は、株主総会を開催する義務が事実上ないので(書面決議を使えるから)、唯一の株主さんが希望する通りの会社設計に改めておいた方が良いでしょう。

社長も務めている株主さんに話を聞くと、実際に会社を動かしてるのは自分だけで、他の取締役やら監査役は実体としては名前を借りているも同然とのこと。

じゃあ、今後いちいち生じる役員変更の手間やら、経営実態を考えると、経営に関与してない役員は退任してもらいましょう、っということとなった。

ただ、取締役会設置会社では、取締役会をまずは廃止しないと、取締役の人数が3人以下となる任期満了退任による登記はできません。

しかし、株式の譲渡制限を導入しないと、取締役会は廃止できないので、これも導入。
(株式を自由に譲渡できると、株主が自由に入れ替わるのに、頻繁に入れ替わりうる株主が経営権を大きく握る形は好ましくないとの立法趣旨のもと、1株でも自由に株を売買できる会社・公開会社は、取締役会の導入が必須となっています)。


監査役の退任についても、監査役設置会社をまずはやめないとなりません。


株券なんて発行しない方が都合いいから、株券発行の定めも廃止。


ついで、任期については、定款を添付しない限りは、平成15年4月20日から二年後に終了。「取締役の任期は、就任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。」定めが当然にあるわけではないのが当時の法律。

ただし、実務的には、「取締役の任期は、就任後、二年以内に到来した最終の決算に関する株主総会まで」とする定款を添付せずとも、重任を決めた株主総会議事録に、「本総会終了後に任期満了により退任する後任として、全役員を重任する」旨記載があれば法務局はパスできるので、こちらが主流。任期が総会終了後に満了する旨の記載がポイントですね。

っとなると、本事例では、平成15年4月20日から満2年の任期を終えたら、つまり、平成15年4月20日に株主総会で選任された日は(この日から始まる任期は満1日分ないので)、初日不算入計算をし、平成15年4月21日から平成17年4月20にまでが法定任期となります。
※ただし予選されていた場合は、平成15年4月20日の0時から任期がスタートできるので、この場合は、平成17年4月19日に任期満了となります。

他方、「取締役の任期は任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。」というタイプだった場合は、就任をした平成15年4月20日から二年たった平成17年4月20日時点で終了していた直近決算は、平成16年7月末の決算ですから、この決算にかかる株主総会が実際に終了した日か、総会が法律上当然に終了しているべき平成16年10月末日に、任期満了退任となります。

「総会終結の時まで任期をうんぬん…」の規定は、ぼーっと考えてると任期が延びる規定だなっと安易に誤解してしまうときがありますが、2年未満で任期満了するケースもしばしばあるということは、うっかり忘れないようにすべきポイントです。

例:2年を超えるケース 決算期 3月末 平成15年4月20日就任 任期満了は平成17年6月の総会終了時か6月末日

  2年を下回るケース 決算期 7月末 平成15年4月20日就任 任期満了は平成16年10月の総会終了時か、10月末日



この事例では、取締役の任期は、平成16年10月末日に終わり、その後は権利義務承継取締役となっていたわけですが、会社法が平成18年5月1日に施行され、この日以降、取締役会・監査役を撤廃したり、取締役を最低一人だけおけばよくなったり、株券を廃止できたり、任期を10年に延ばしたり…等々と、様々な規制緩和が入りましたので、これらを会社法施行日付けの臨時株主総会書面決議にて導入する、っというやり方が、実務一例としてはあります。

監査役については、平成14年5月1日以降に就任してるケースでは(本ケース)、「就任後4年内の最終の決算期に関する定時株主総会の終結の時迄」という法律が適用されますので、本事例では、平成18年5月1日時点でも任期はあったので、退任事由としては、任期満了ではなく、監査役制度の廃止による退任となります。

また、平成18年5月1日から任期を約10年に延ばせるわけですから、本事例においては、役員変更登記懈怠の問題が、平成18年5月1日以降に関しては、一応形式的には回避できてますね。

必要になった書面は、

(1)平成18年5月1日付株主総会書面決議議事録(記載例は下記の通り)


<取締役会廃止の件>
平成18年5月1日をもって取締役会を廃止する。
<監査役廃止の件>

平成18年5月1日をもって監査役を廃止する。なお、同日をもって監査役○○が退任することを確認する。
<取締役及び代表取締役の選任>
当社取締役及び代表取締役として下記の者を選任した。
東京都千代田区神田東松下町46番地大木ビル3階
○○
(選任年月日 平成18年5月1日)
なお、取締役○○、△△、□□は、平成16年10月末日をもって任期満了退任したことを確認する。
<株式の譲渡制限の定めの設定>
当会社の株式を譲渡により取得するには、株主総会の承認を受けなければならない。
<株券を発行する旨の定めの廃止>
平成18年5月1日をもって株券を廃止する。なお、当会社は株券を発行したことは無い。
<定款全部変更の件>
会社法施行に伴う制度設計の見直しのため、当会社の定款を後記定款の通りとする(フルリニューアルした定款を添付)。

株券を廃止する際は、株券が発行されたことがない旨の付記がある株主名簿が必要となるので、


(2)株主名簿・株主リスト


(3)就任承諾書


(4)印鑑証明


(5)登記委任状


(6)印鑑届出


(7)印鑑カード交付申請

※6,7は事案によっては不要


っといったところですね。

平成15年4月20日当時の定款を復元しないでも登記はできます。平成18年5月1日付けの、新・会社法制定後のリニューアル版定款を作成して、あとは、議事録の記載を工夫しつつ、登記に必要な書面を整えていくイメージですかね。

司法書士試験的な考察点としては、権利義務承継取締役の退任登記ができるのは、新任の取締役が入ってからですが、退任年月日は、本来の任期満了日であり、新任取締役が入ってきた日では無いっというとこでしょうか。



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