商業登記につきものの、だれがどの印鑑を押すのか、出席者の連名が必要なのか、その辺りを少し整理しましょう。今回は、取締役会議事録への押印規定と、株主総会議事録への押印規定と、就任承諾書への実印押印義務・実印押印規定を確認してみます。

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商業登記ワンポイントメモ

31 取締役会議事録と印鑑・押印義務、取締役決定書と押印義務、株主総会議事録と印鑑・押印義務、就任承諾書と実印押印義務・実印押印規定



最近では取締役会のある会社の登記をするケースはずいぶん減りました。

毎月来るような登記でもなく、数カ月に1度、半年に1度といった頻度のこともあります(取締役会は廃止することが多いですし)。

普段作ってる株主総会議事録は、代表取締役選任事案でもない限りは会社法や商業登記法上押印義務規定がなく、押印不要のケースが多いため、せいぜい議事録作成者たる代表取締役の氏名のみ記名押印し、とりあえず会社の実印をついておくというやり方が一般的かと思います。

同じ要領で、取締役会議事録にも代表取締役の氏名のみを記名押印し、会社の実印だけついて登記を出すと、補正を食らってしまいます。

取締役会議事録については、会社法369条にて、出席取締役の押印義務規定があり、法務局としても出席取締役・監査役の記名押印無き議事録は、たとえ会社実印が押してあっても様式不備・押印不備として補正の対象としています。

たまにしか取締役会の登記を扱わないと、ついうっかり、株主総会議事録のごとく、「会社実印と訂正印さえ押しておけばでどうにかなるでしょ」、っという会社実印・訂正印万能幻想のもとに、補正を命じられることとなるのであります。。。。

会社の代表印だけを押し他の取締役の押印を省略した取締役会議事録で登記する方法、何かないかなーって考えてると、取締役会全員同意書面決議の方法がありますが、これは出席者の概念がないため、各取締役からの押印は不要でありますが、定款に、取締役の全員の同意を条件に取締役会の開催省略を出来る旨の定めが必要なので、取締役会書面決議にて登記をしようとすると、定款の添付が必要になり、かえって簡便な手続きではなくなります。

素直に取締役会議事録には、出席者の名前を列記し、押印をもらいましょう。

代表取締役選任事案でないのであれば、認印で大丈夫です。

では、取締役会がない場合の、取締役決定書・取締役決議書なら、法文上、会議開催義務規定がなく、したがって出席者の押印の概念も法文上の規定ないので、賛成取締役の記名押印義務はないものと考えてよいかというと、そういうわけでもないのです。
法文上の根拠も、通達も存在しませんが(確認したところ、渋谷の法務局の方もそう言ってました)、少なくとも渋谷の法務局(平成28年12月7日時点)では、取締役会議事録に準じて、賛成者の記名押印がないと絶対に受理しない・却下すると強弁されました。

本当はこういう事案は自分で登記実験用の会社をつくって審査・訴訟までもっていきたいのですが、中々そんな暇は無く、年をとってセミリタイヤ状態になったら積極的に確認をとっていきたいものです。


また、合同会社の職務執行者の定めについては、株式会社の登記について定める商業登記規則61条や、合同会社の登記について定める商業登記規則91条・92条を読む限り、株式会社が合同会社の代表社員になり、職務執行者を選任しなければならない事案に関して、職務執行者を定める取締役会議事録(ないし取締役決定書ないし株主総会議事録)には実印の押印規定は無いため、全て認印で良さそうです。



一方、一般社団法人の登記に関する法律は、「一般社団法人等登記規則」となります。

一般社団法人等登記規則第3条に、一般社団法人の登記のルールについては、商業登記規則より様々準用している旨の規定があり、取締役の就任承諾書への印鑑証明添付の規定(商業登記規則61条4項)は株式会社の規定が準用されています。

つまり、理事会が設置されてない一般社団法人の平理事の就任承諾書には、株式会社の平取締役の就任承諾書と同様、印鑑証明の添付が必要となっています。

また、代表理事を選定する議事録には、出席役員全員の個人実印もしくは、法人実印の押印が必要な点も、株式会社と同様の規定となっております。

会社法第三百六十九条  取締役会の決議は、議決に加わることができる取締役の過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)が出席し、その過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)をもって行う。
 前項の決議について特別の利害関係を有する取締役は、議決に加わることができない。
 取締役会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成し、議事録が書面をもって作成されているときは、出席した取締役及び監査役は、これに署名し、又は記名押印しなければならない。


 第五節 株式会社の登記(商業登記規則)

(添付書面)
商業登記規則 第六十一条  定款の定め又は裁判所の許可がなければ登記すべき事項につき無効又は取消しの原因が存することとなる申請については、申請書に、定款又は裁判所の許可書を添付しなければならない。
 登記すべき事項につき次の各号に掲げる者全員の同意を要する場合には、申請書に、当該各号に定める事項を証する書面を添付しなければならない。
 株主 株主全員の氏名又は名称及び住所並びに各株主が有する株式の数(種類株式発行会社にあつては、株式の種類及び種類ごとの数を含む。次項において同じ。)及び議決権の数
 種類株主 当該種類株主全員の氏名又は名称及び住所並びに当該種類株主のそれぞれが有する当該種類の株式の数及び当該種類の株式に係る議決権の数
 登記すべき事項につき株主総会又は種類株主総会の決議を要する場合には、申請書に、総株主(種類株主総会の決議を要する場合にあつては、その種類の株式の総株主)の議決権(当該決議(会社法第三百十九条第一項 (同法第三百二十五条 において準用する場合を含む。)の規定により当該決議があつたものとみなされる場合を含む。)において行使することができるものに限る。以下この項において同じ。)の数に対するその有する議決権の数の割合が高いことにおいて上位となる株主であつて、次に掲げる人数のうちいずれか少ない人数の株主の氏名又は名称及び住所、当該株主のそれぞれが有する株式の数(種類株主総会の決議を要する場合にあつては、その種類の株式の数)及び議決権の数並びに当該株主のそれぞれが有する議決権に係る当該割合を証する書面を添付しなければならない。
 十名
 その有する議決権の数の割合を当該割合の多い順に順次加算し、その加算した割合が三分の二に達するまでの人数
 設立(合併及び組織変更による設立を除く。)の登記の申請書には、設立時取締役が就任を承諾したことを証する書面の印鑑につき市町村長の作成した証明書を添付しなければならない。取締役の就任(再任を除く。)による変更の登記の申請書に添付すべき取締役が就任を承諾したことを証する書面の印鑑についても、同様とする。
 取締役会設置会社における前項の規定の適用については、同項中「設立時取締役」とあるのは「設立時代表取締役又は設立時代表執行役」と、同項後段中「取締役」とあるのは「代表取締役又は代表執行役」とする。
※「取締役会のない会社での取締役の就任承諾書」「取締役会のある会社での代表取締役の就任承諾書」には実印押印規定がある。他方、合同会社の代表社員、業務執行社員、職務執行者の就任承諾書には実印押印規定がない。後記合同会社の登記に関する商業登記規則の条文を見ても実印押印規定は無い。ただし、合同会社の代表者が、その会社実印を印鑑届出をする際には印鑑届出書には印鑑証明が必要になるのに注意。
 代表取締役又は代表執行役の就任による変更の登記の申請書には、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める印鑑につき市町村長の作成した証明書を添付しなければならない。ただし、当該印鑑と変更前の代表取締役又は代表執行役(取締役を兼ねる者に限る。)が登記所に提出している印鑑とが同一であるときは、この限りでない。
 株主総会又は種類株主総会の決議によつて代表取締役を定めた場合 議長及び出席した取締役が株主総会又は種類株主総会の議事録に押印した印鑑
 取締役の互選によつて代表取締役を定めた場合 取締役がその互選を証する書面に押印した印鑑
 取締役会の決議によつて代表取締役又は代表執行役を選定した場合 出席した取締役及び監査役が取締役会の議事録に押印した印鑑
※「代表取締役」「代表執行役」の選任事案については実印の押印規定がある。他方、「合同会社の職務執行者」「業務執行社員」「代表社員」については実印の押印規定がない。
 設立の登記又は取締役、監査役若しくは執行役の就任(再任を除く。)による変更の登記の申請書には、設立時取締役、設立時監査役、設立時執行役、取締役、監査役又は執行役(以下この項において「取締役等」という。)が就任を承諾したことを証する書面に記載した氏名及び住所と同一の氏名及び住所が記載されている市町村長その他の公務員が職務上作成した証明書(当該取締役等が原本と相違がない旨を記載した謄本を含む。)を添付しなければならない。ただし、登記の申請書に第四項(第五項において読み替えて適用される場合を含む。)又は前項の規定により当該取締役等の印鑑につき市町村長の作成した証明書を添付する場合は、この限りでない。
 代表取締役若しくは代表執行役又は取締役若しくは執行役(登記所に印鑑を提出した者に限る。以下この項において「代表取締役等」という。)の辞任による変更の登記の申請書には、当該代表取締役等が辞任を証する書面に押印した印鑑につき市町村長の作成した証明書を添付しなければならない。ただし、当該印鑑と当該代表取締役等が登記所に提出している印鑑とが同一であるときは、この限りでない。
 設立の登記又は資本金の額の増加若しくは減少による変更の登記の申請書には、資本金の額が会社法 及び会社計算規則 (平成十八年法務省令第十三号)の規定に従つて計上されたことを証する書面を添付しなければならない。
10  登記すべき事項につき会社に一定の分配可能額(会社法第四百六十一条第二項 に規定する分配可能額をいう。)又は欠損の額が存在することを要するときは、申請書にその事実を証する書面を添付しなければならない。
11  資本準備金の額の減少によつてする資本金の額の増加による変更の登記(会社法第四百四十八条第三項 に規定する場合に限る。)の申請書には、当該場合に該当することを証する書面を添付しなければならない。


第八節 合同会社の登記(商業登記規則)

(解散等の登記)
商業登記規則 第九十一条  会社法第六百四十一条 (第五号及び第六号を除く。)の規定による解散の登記をしたときは、業務を執行する社員及び代表社員に関する登記を抹消する記号を記録しなければならない。
 前項の規定は、設立の無効又は取消しの登記をした場合について準用する。
(準用規定)
第九十二条  第六十一条第九項及び第六節(第八十六条を除く。)の規定は、合同会社について準用する。この場合において、第八十三条及び第八十四条中「社員」とあるのは、「業務を執行する社員」と、第八十八条の二第一項中「社員の加入による変更」とあるのは「業務を執行する社員の加入若しくは業務執行権の付与による変更」と、同項及び同条第二項中「社員、」とあるのは「業務を執行する社員、」と読み替えるものとする。

※特に実印規定の言及なし。合同会社については商業登記規則の条文はこの二つのみ。



一般社団法人等登記規則
第三条 商業登記規則(昭和三十九年法務省令第二十三号)第一条の二第一項及び第二項、第二条から第六条まで、第九条第一項(第一号から第三号までを除く。)、第三項、第四項、第五項(第二号から第五号までを除く。)、第六項、第七項及び第十項、第九条の二、第九条の三、第九条の四(第一項後段を除く。)、第九条の五(第四項を除く。)、第九条の六から第十一条まで、第十三条から第十八条まで、第十九条(第四号を除く。)、第二十条から第二十二条まで、第二十七条から第四十五条まで、第四十八条から第五十条まで、第五十三条第一項、第六十一条第一項及び第四項から第八項まで、第六十二条から第六十五条まで、第六十六条第一項、第六十七条第一項及び第二項、第六十八条、第七十一条、第七十二条(第一項第二号、第三号及び第五号を除く。)、第七十三条、第七十四条、第七十七条、第八十条(第一項第六号を除く。)、第八十一条、第八十一条の二、第八十五条第二項、第九十八条から第百四条まで、第百六条(第四項を除く。)、第百七条から第百九条まで、第百十一条、第百十二条、第百十四条、第百十五条、第百十七条並びに第百十八条の規定は、一般社団法人等の登記について準用する。





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