合同会社は自然人ではない、法人が代表社員になれたりと非常に特殊です。変則事例である法人が社員、業務執行社員となる場合の合同会社の設立についてふれてみます。

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商業登記ワンポイントメモ

32 法人が社員の合同会社の設立


合同会社は株式会社とよく似ていますが、役員(代表社員)が自然人でなくても良いという点が際立った特徴となっております。

しかし、その場合の添付書類はどうなっているのでしょうか。

法人が社員の合同会社の設立は取扱実例が多い事案ではないので、備忘録的に、添付書類の要非等を書き散らしていきます。

<法人2社が社員で、いずれも業務執行社員つまり各自代表のケース>

業務執行社員としての就任承諾書は添付書類にならない。法文上要求されていないからである。これは本事例と異なり、片割れのみが代表社員となる事案でも同様である。また、業務執行社員に関する事項を定款にて定める場合(定款ではない書面での私的合意は無効と思われる。会社法第五百九十一条にて、「業務を執行する社員を定款で定めた場合において」とあるからである)、定款は出資者全員の合意にて作成しなければならない性質上、業務執行社員への就任承諾意思確認をせずとも、定款上業務執行社員となることに同意していることが明らかだからだとされています(会社法第五百七十五条 合同会社を設立するには、その社員になろうとする者が定款を作成し、その全員がこれに署名し、又は記名押印しなければならない。 )。

また、代表社員としての就任承諾書も本事例では添付書類にならない。法文上要求されていないからである。ただし、本事例と異なるが、互選により法人を代表社員として定める場合は、代表社員になることへの就任承諾書が通達上必要となります。
定款で代表社員を定めれば、前述の理屈により就任承諾意思は自明なので(定款は全社員の合意によりつくられるから)、就任承諾書の別添は不要といえますが、互選だとその論法は通用しないからです(合同会社の代表社員の選任方法は法律で2種類しか用意されてない。定款で直接定める方法と、業務執行社員の中から互選する方法のみです(会社法第五百九十九条3項))。

代表社員が法人の場合、自然人を職務執行者に選任する必要があり、職務執行者になることへの就任承諾書が必要となる(この就任承諾の意思表示は、代表社員たる法人あてとなり、新設する合同会社あてではない。法文上の規定がないため、迷ったら新設する合同会社と代表社員たる法人の両あてに作成するのも一つの方法ですが)。

この職務執行者になることへの就任承諾書には、実印の押印規定がないため、実印・印鑑証明は不要。

なお、法人が業務執行社員とならない場合は、職務執行者を選任する必要はないので、職務執行者の就任承諾書は不要。
業務執行社員にならないのであれば、登記事項にもならない。

定款に誰を業務執行社員にするかを定めない場合は、会社法第五百九十条 (社員は、定款に別段の定めがある場合を除き、持分会社の業務を執行する。 )の規定に基づき、全社員が業務執行権を有し、かつ各々が代表社員となる。業務執行のあり方としては、業務執行社員の過半数同意により決定していく。

全員が業務執行権を有する制度設計でも、定款には業務執行社員が誰であるかを定めるケースが多いような気がする。

法人が代表社員になる場合で、かつ、新設する合同会社の印鑑届出をする場合、必要書類がかなり変わります。

印鑑届出書がかなり特殊で、

注1(新設する合同会社の実印にしようと思っている印鑑)の欄は迷うことは無いかと思いますが、

委任状欄への押印が、職務執行者の認印で足りる点が特殊でしょうか。

法人たる代表社員の会社実印ではなく、職務執行者個人の、しかも認印でいけます。

委任状欄の委任者の住所氏名は、職務執行者個人の住所氏名となります。



印鑑届出書の右側部中、「印鑑提出者」の欄は、

「資格」 代表社員
「氏名」本店 東京都千代田区○○、商号 株式会社○○、職務執行者だれそれ の振り合いになります。
「生年月日」職務執行者の生年月日

っとなります。

ただし、印鑑届出意思・真正の担保のため、「保証書」なる書面を提出するルールとなっています。

書式は法務省のホームページに落ちていますが、記載事項に変更がない程度に自作して大丈夫です。

この「保証書」には、

上記印鑑が当社職務執行者 山田太郎 の印鑑に相違ないことを保証します。

のように記載し、上記印鑑の欄(四角く囲ってある印鑑届出欄)に、新設する合同会社の実印にしようと思っている印鑑を押印します。






                            保証書

 

上記印鑑が当社職務執行者 山田太郎 の法務局届出印に相違ないことを保証します。

 商   合 合同会社○○(新設する会社の商号)
 本   店 東京都千代田区霞が関一丁目1番1号
 代表社員 東京都千代田区神田○○町○番地
        株式会社△△
職務執行者 山田太郎
 生年月日 ○年○月○日


平成  年  月  日

東京都千代田区霞が関一丁目1番1号

株式会社△△

代表取締役 法務太郎         会社実印


※ この法務太郎の右の印鑑(会社実印と書いてある欄)は、代表社員たる株式会社△△社の会社の実印。これの印鑑証明と、株式会社△△社の登記簿謄本も添付書類となります。






さらに、上記保証書の他に、職務執行者を選任したことを証する書面として、取締役決定書(もしくは取締役会議事録や株主総会議事録)も必要となります。


全ての社員が法人しかいない場合はしようがありませんが、自然人も出資している場合、その自然人を代表社員とし、印鑑届出も自然人の方がする方が、保証書の作成も省けて簡便であります。

どのような制度設計でも、職務執行者個人の印鑑証明が必要になるケースはありません。職務執行者が印鑑届出者になろうともです(職務執行者の就任承諾書も実印規定がありませんし、印鑑届出書、保証書ともに職務執行者個人の実印規定がありません。結果、いかなる事案でも職務執行者個人の印鑑証明は不要になりますが、印鑑届出書と保証書に生年月日の記載が必要なのと、代表者に準ずる地位があることを鑑み、就任承諾書には社内的には印鑑証明をもらっておく運用が好ましいと考えます)。


<参考 合同会社の定款の絶対的記載事項>

(1)目的

(2)商号

(3)本店の所在地

(4)社員の氏名(名称)および住所

(5)無限・有限責任社員の別

(6)出資の目的・価額等

※業務執行社員の区別は絶対的記載事項ではなく、相対的記載事項なのがポイント。原則は全社員が業務執行社員かつ代表社員ということ。


<参考 合同会社の登記事項・登記記載例>
業務執行社員について登記される事項は氏名のみで、住所は登記されない。登記記載例としては、

業務執行社員が自然人の場合、


「業務執行社員 自然三郎」



業務執行社員が法人の場合、


「業務執行社員  株式会社○○」



のみで、自然人・法人で記載内容に違いはありません。


当然、住所が登記されていないと訴訟等で不都合が生じるので、住所の登記される、代表社員という概念が必要となります。

一人しか業務執行社員がいなければ、当然にそのものは代表社員となり、かつ、登記事項となります。

逆に、業務執行社員が二人以上いる場合は、いずれかのみを代表社員とすることで、他方は代表社員としては登記されないこともできます。

自然人が代表社員の場合の登記記載例は、

東京都千代田区○○一丁目○番○号
法務太郎

法人が代表社員の場合の登記記載例は、

東京都千代田区○○一丁目○番○号
代表社員 株式会社○○
埼玉県○○市○○町○番地の○
職務執行者 山田太郎

のようになります。

なお、法人を代表社員にし、その職務執行者を二人選ぶことも法的には可能で、その場合の登記記載例は、

東京都千代田区○○一丁目○番○号
代表社員 株式会社○○
埼玉県○○市○○町○番地の○
職務執行者 山田太郎

東京都千代田区○○一丁目○番○号
代表社員 株式会社○○
千葉県△市△町△番△号
職務執行者 佐藤花子

のようになり、同名の代表社員が2社連記されてるかの如く外形で非常に違和感を覚えるものとなっております。


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