外圧により拙速に導入されたとされる株主リスト制度。当然ながら条文の整備が追い付いておらず、運用はまちまちであったり、無意味・過剰な確認や形式論での補正を命じられたりと問題の多い制度ですが、今回は自己株式がある場合の株主リストの記載方法についてです。
35 自己株式と株主リスト
法改正により、株式会社の商業登記をする際、手続きとして株主総会の決議を必要とする場合は、株主リストの添付が必要になりました。
ほとんどの非上場会社の登記では、全員が賛成するケースが多く、そもそも単独株主の事例が圧倒的多数です。
本来は株主総会の決議が正しく可決しているかの確認書類であるはずの株主リストについて、全員が賛成し、どう見ても可決している旨が読み取れる場合にも、法務局からは事細かな形式論での補正を命じられることがままあります。
ケースとしては多くないですが、自己株式を発行している場合は、株主リストの作成には注意が必要です。
例えば、本店が、東京都渋谷区△△の「あかさたな株式会社」について、発行済株式が200株で、自己株式が50株、創業者たるSさんが150株保有している場合に、漫然と、
1 住所:東京都千代田区○○ 氏名 S 株式数150株 議決権数150個 議決権割合200分の150
2 住所:東京都渋谷区△△ 氏名 あかさたな株式会社 株式数50株 議決権数50個 議決権割合200分の50
合計 200株 200個 100%
っと記載すると補正になります。
自己株式は議決権がなく、かつ、総議決権数からも除外する必要が出てくるからです。
そのため、自己株式の保有者すなわち自社を株主リストに記載すると補正になります。
自己株を除いた他の株主が一人しかおらず、どのように読んでも株主総会決議としては可決されていようとも、自己株式を議決権から除外した株主リストを作成しなければ補正になってしまいます。
上記の例では、
1 住所:東京都千代田区○○ 氏名 S 株式数150株 議決権数150個 議決権割合150分の150
合計 150株 150個 100%
といった記載が必要です。
株主リスト制度の導入当初は、法務省のホームページにも自己株式の取り扱いは記載がありませんでしたが、執筆時点(2017年7月12日時点)では記載があります。
ポイントは、
@議決権を有しない株主はリストから除外すること(例:自己株を保有する自社)
A総議決権数からも、自己株式の数を差し引く必要があること
B議決権割合の分母も、Aの措置に伴い自己株式分が差し引かれること
っといったところでしょう。
その他の注意点として、法律上株主全員の同意が必要な決議以外の場合、株主全員が同意していることが株主リスト上明らかでも、形式的に議決権割合の記載を要求されるケースが結構ありますので、常に議決権割合は記載する運用の方が補正が少ないでしょう。
また、議決権数の多い順に記載せよというルールも意外と忘れやすく、補正が面倒なので気をつけましょう。
株主総会が可決されているか否かの補助証明資料に過ぎない株主リストでありながら、記載順序まで法定されるというのは明らかに過剰規制ですが、おかみの言うことに逆らって登記がいつまでも受理されないのも馬鹿らしいので、不合理ではありながらも、しぶしぶ要求どおりにせざるを得ないことはよくあります。
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