38 不動産の現物出資と検査省略
投資用不動産を個人購入し、のちに節税目的で会社を設立するという話は割りとよくあります。
この場合、
1 不動産登記手続きとしては、「年月日 現物出資」を登記原因日付として所有権の移転登記(所有権の移転年月日が具体的な日付となります)
2 商業登記手続きとしては、「新株発行増資」とするのが一般的です。
不動産に限らず、現物出資(法文上では、「金銭以外の財産の出資」とされています)をする際は、法文上の原則としては、裁判所に検査役の選任申し立てをすべきこととされています(会社法207条)
しかし、この手続きは数ヶ月以上は容易にかかり、裁判所への予納費用も高額であるので、実務的にはほぼ検査役の調査を回避するよう手続き選択がなされることが一般的です。
会社法は、検査役の検査省略をできるケースを5つ定めています。
※なお、5つの例外のうち、1つは金銭債権の現物出資で、帳簿価額を超えないならば検査不用という規定で、金銭債権出資の場合のみの特例となります。また、市場価格のある有価証券の現物出資に関する検査省略の規定も5つのうちの1つとして規定があります。
したがって、不動産の現物出資の場合は、5つの例外のうち、3つの要件のうちのどれかに該当すれば、検査役の調査を省略できることとなります。
<省略要件 いずれかひとつに該当すればよい>
1 交付される株式が一定以下の少数であるとき
→現物出資者に交付される株式の総数が、発行済株式の10分の1を超えない場合は、検査省略できる(会社法207条9項)。
2 出資される財産の価額が一定額以下の小額であるとき
→募集事項として定められた現物出資財産の価額が(複数の財産を現物出資する場合はそれらの総額が)500万円を超えない場合は、検査省略できる(会社法207条9項)
3 現物出資財産の価額が妥当であることについて税理士・弁護士等、法定士業証明を受けた場合、検査省略できる
→不動産の現物出資の場合は、税理士等証明+不動産鑑定士の作成した鑑定評価書のダブル証明となります。
通常、不動産鑑定士の評価は高額ですから、1千万程度までの現物出資の場合は、税理士さんが不動産屋に売価の査定を複数取った上で、税務上問題の出ない程度の金額で資本計上しつつ、前記1の、新株発行数を抑えることによる検査省略を利用するケースもあります。
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