現物出資の中でも手続きが比較的簡便で、なかなか利用度の高い制度である、負債・債務の現物出資・デットエクイティスワップ・DESの登記手続き・添付書類について説明をします。
8 負債・債務の現物出資・デットエクイティスワップ・DESの登記について
<負債・債務の現物出資・デットエクイティスワップ・DESって何?>
会社経営をしていると、会社の運転資金だけではうまく回せないことがしばしばあります。
そんな時、社長が自らの私財を投入して(経営者貸付け)、どうにかこうにか会社を回すのはよくある話。
しかしながら、経営者貸付額が多いと、貸借対照表には、社長の貸付金がどっかりと乗っかった、負債の多い会社に見えてしまいます。
そこで、経営者が貸付金として会社から回収できる権利を放棄し、かわりに株式に振り替える手続きが「負債・債務の現物出資・デットエクイティスワップ・DES」の一例です。
<負債・債務の現物出資・デットエクイティスワップ・DESのメリット>
金融機関から融資を受ける際、負債が大きい会社には融資を許可するわけにはいかないから、負債・債務の現物出資・デットエクイティスワップ・DESをして貸借対照表から債務を一部除去してくれ、と頼まれるケースがあります。
つまり、融資を受けられる可能性を高められるというメリットがあります。
また、知人づてなどで、出資者として資金援助してくれる人が現れた際、資金援助・第三者割当増資をうけるまえに、負債・債務の現物出資・デットエクイティスワップ・DESをほどこして創業者の持ち株を増やしておけば、資金援助者に会社を乗っ取られる心配もなくなるなど、利用方法はさまざまあります。
<負債・債務の現物出資・デットエクイティスワップ・DESのデメリット>
資本金が1000万円を超えると、法人住民税その他税金が高額化します。
手続きそのものに税金や登記費用がかかります。
<負債・債務の現物出資・デットエクイティスワップ・DESの手順例>
1 負債を株式に振り替える前提として、経営者が会社に貸し付けている債権について、準消費貸借契約等を締結します。
準消費貸借契約を締結するのは、都度発生しているであろう個々の経営者貸付を一つずつ現物出資していくのは煩雑なので、会社の経営者に対する負債を一本化して手続きを簡略化するためです。
…この準消費貸借契約書は、現物出資額が500万円以下であれば法務局に提出不要です。
2 現物出資による増資の計画を株主総会で承認をとります(現物出資を利用する募集事項の決定)…第1の株主総会議事録の作成
3 出資を引き受けたいという人を募り、第三者割当増資について、申し込みをしてもらいます。
…第三者割当増資への出資者(=経営者)の申込証は添付書類となります。
4 株主総会を開いて、申込者の中から会社で都合のよい人をピックアップし、新株を割り当てます(割当決定)
…この割当決定議事録も添付書類となります。
5 払込・給付期日の到来
…金銭出資の場合は、払込が実行されたことを証明するために会社の通帳付きの払込証明書が必要となりますが、現物出資の場合、給付の証明書の添付は不要となっています。現物出資の場合、公的ないし客観的証明力の強い給付証明書が常に取れるわけではなく、代表者による自己証明書面をわざわざ要求しても、さほど登記の真正が担保されるわけではないことを実質的理由としているのだと思われます。
6 その他の添付書類を作成し、法務局に登記申請をする。
おおまかにいうとこんな感じです。
増資する金額を500万円以下におさえることによって、会計帳簿も、準消費貸借契約書も添付不要なので、この場合、通常の金銭出資増資と添付書類が変わりません(むしろ、金銭出資の場合は通帳の添付が必要なので、書類が少なくて済む)。
増資する金額を500万円以下に抑え、経営者が会社に対して貸し付けている金額を額面で現物出資すれば、法的には簡便になります。
逆に500万円を超える場合は、税理士の証明が必要となったり、帳簿や準消費貸借契約書の作成が必要となったりと、色々面倒になります。
中小企業にも、資金調達の観点からは、負債・債務の現物出資・デットエクイティスワップ・DESが利用できるケースがあるということなんですね。
参考条文 会社法207条9項
前各項の規定(現物出資の検査役規定)は、次の各号に掲げる場合には、当該各号に定める事項については、適用しない。
207条9項5号
現物出資財産が株式会社に対する金銭債権(弁済期が到来しているものに限る。)であって、当該金銭債権について定められた第百九十九条第一項第三号の価額(※募集事項決定の際の議事録中の現物出資財産の価額)が当該金銭債権に係る負債の帳簿価額を超えない場合 当該金銭債権についての現物出資財産の価額
については、検査役の規定適用なし。
ちなみに、4号が、税理士の証明なので、税理士の証明がある場合は、帳簿添付が不要といえる。
商業登記法第五十六条
募集株式(会社法第百九十九条第一項 に規定する募集株式をいう。第一号において同じ。)の発行による変更の登記の申請書には、次の書面を添付しなければならない。
三 金銭以外の財産を出資の目的とするときは、次に掲げる書面
ニ 会社法第二百七条第九項第五号 に掲げる場合には、同号 の金銭債権について記載された会計帳簿
会計帳簿といっても、莫大な量の会計帳簿の全体を添付することが必要かどうかについては言及がないため、DESに関連する該当部分の貸付金帳簿の該当部分のみを添付すれば良いと考えられますが、法務局ごとに運用の差があるようです。
適法な会計帳簿をつけられれば、税理士等の証明書をカットできるので、有用ですね。
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