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債務整理の理論


3 債務整理・過払い問題における最高裁平成19年6月7日判決及び批判

高金利の消費者金融業者に対する過払い金問題において、今までに発生していた過払い金が、その後の借り入れが行われた際に、その借入金から当然に差し引き計算されるか否かという点について、最高裁は、平成19年2月13日判決にて、特に相殺や、充当指定の意思表示のない場合は、基本契約に基づく一連の取引の場合か、もしくは、基本契約があるかのごとく将来の取引が想定されるような場合にしか、当然には一連充当計算をすることはできないと判断しました。

しかし、その判断は、既に出された最高裁平成15年7月18日判決における法的構成と矛盾しており、民法の条文解釈上も好ましいものではなく、一般消費者保護としても問題のあるものでした(詳しくは、2 最高裁平成19年2月13日判決についてを参照)。

そして、最高裁平成19年2月13日判決が出た後も、全国の弁護士・司法書士が、最高裁が平成19年2月13日判決で出した判断基準はおかしい、最高裁平成15年7月18日判決と矛盾している、修正が必要である、との主張をし、それに少なくない数の裁判官が同調しました。

その結果、既に発生していた過払い金が、いまだ発生していない将来の借入金に対して充当できるかという論点について、平成19年6月7日に最高裁はひとつの判断を出しました。

最高裁平成19年6月7日判決は次の通りです(一部省略)。


同一の貸主と借主との間で基本契約に基づき継続的に貸付けが繰り返される金銭消費貸借取引において,借主がそのうちの一つの借入金債務につき利息制限法所定の制限を超える利息を任意に支払い,この制限超過部分を元本に充当してもなお過払金が存する場合,この過払金は,当事者間に充当に関する特約が存在するなど特段の事情のない限り,弁済当時存在する他の借入金債務に充当されると解するのが相当である(最高裁平成13年(受)第1032号,第1033号同15年7月18日第二小法廷判決・民集57巻7号895頁,最高裁平成12年(受)第1000号同15年9月11日第一小法廷判決・裁判集民事210号617頁参照)。
これに対して,弁済によって過払金が発生しても,その当時他の借入金債務が存在しなかった場合には,上記過払金は,その後に発生した新たな借入金債務に当然に充当されるものということはできない。
この最高裁の事例は、「弁済によって過払金が発生しても,その当時他の借入金債務が存在しなかった場合」に該当しています。

しかし,この場合においても,少なくとも,当事者間に上記過払金を新たな借入金債務に充当する旨の合意が存在するときは,その合意に従った充当がされるものというべきである。
これを本件についてみるに,前記事実関係等によれば,上告人と被上告人との間で締結された本件各基本契約において,被上告人は借入限度額の範囲内において1万円単位で繰り返し上告人から金員を借り入れることができ,借入金の返済の方式は毎月一定の支払日に借主である被上告人の指定口座からの口座振替の方法によることとされ,毎月の返済額は前月における借入金債務の残額の合計を基準とする一定額に定められ,利息は前月の支払日の返済後の残元金の合計に対する当該支払日の翌日から当月の支払日までの期間に応じて計算することとされていたというのである。
これによれば,本件各基本契約に基づく債務の弁済は,各貸付けごとに個別的な対応関係をもって行われることが予定されているものではなく,本件各基本契約に基づく借入金の全体に対して行われるものと解されるのであり,充当の対象となるのはこのような全体としての借入金債務であると解することができる。
そうすると,本件各基本契約は,同契約に基づく各借入金債務に対する各弁済金のうち制限超過部分を元本に充当した結果,過払金が発生した場合には,上記過払金を,弁済当時存在する他の借入金債務に充当することはもとより,弁済当時他の借入金債務が存在しないときでもその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意を含んでいるものと解するのが相当である。原審の前記判断は,これと同旨をいうものとして,是認することができる。論旨は採用することができない。


この最高裁判決でも、弁済者保護に欠けると批判の多かった最高裁平成19年2月13日判決と同様、既に発生した過払い金は、その過払い金が発生した時点で借入金が存在しない場合には、後に借入がなされた場合でも、当然には差し引き充当計算はできないと判断しました(赤字部分)。

しかし、「少なくとも,当事者間に過払金を新たな借入金債務に充当する旨の合意が存在するとき」は、過払い金が発生した当時、別口の借入金が存在しているいないにかかわらず、将来の貸付時にも過払い金と貸付金について当然に差し引き充当計算をできる、という主旨の判断をしました。

最高裁平成19年6月7日判決は、最高裁平成19年2月13日判決における、「将来の貸し付けに対して、既存の過払い金が充当できる基準」の具体例としてあげられていた、
@同一の基本契約に基づく一連の取引の場合
A基本契約に基づく一連の取引ではないが、基本契約があるかのごとく、将来の取引が想定される場合
にプラスして、
B「当事者間に上記過払金を新たな借入金債務に充当する旨の合意が存在するとき」
を挙げました。

そして、すでに最高裁平成19年2月13日判決にて示されていた、当前充当計算をできる基準である「同一の基本契約に基づく一連の取引」が、どういう理論構成に基づき当前充当計算ができるかという理由づけについて、
「本件各基本契約は,同契約に基づく各借入金債務に対する各弁済金のうち制限超過部分を元本に充当した結果,過払金が発生した場合には,上記過払金を,弁済当時存在する他の借入金債務に充当することはもとより,弁済当時他の借入金債務が存在しないときでもその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意を含んでいるものと解するのが相当である」
っとしました。

つまり、将来長きにわたるであろう金銭消費貸借基本契約には、借金の払い過ぎ分が生じたとしても、その後の借り入れが実行されたときに、当然に返済に充てられることが暗黙の合意事項として定められていたものと解釈すべきだとしたのです。

最高裁平成19年6月7日判決は、一見すると、最高裁平成19年2月13日判決よりも借主保護・消費者保護に動いたような気もしますが、結局のところ、「同一の基本契約に基づく一連の取引」では無い場合には、既に過払い金が発生していようとも、それが、後に借入がなされたときに、その返済へと当然に充てられることはない、っということを確認したにすぎません。

同一の基本契約があるとかないとかいう話は置いておいて、「当事者間に過払金を新たな借入金債務に充当する旨の合意が存在するとき」にも、既に発生していた過払い金は、将来借り入れがなされたときに、当然にその返済へと充てられるという解釈は、わざわざ最高裁で判断するまでもありません。

最高裁平成19年6月7日判決は、契約社会においては当然に認められる法的効果を、大仰に確認しているだけにすぎません。

そのため、最高裁平成15年7月18日判決において引用された民法489条及び491条が、過払い金が既に発生している状態において、その後の貸付が行われたときにも適用されるのか否かという点については、未だ明確な根拠をもって判断されたわけではないといえます。

最高裁平成15年7月18日判決までは、民法の条文を引用したうえでの法解釈を示していたのですが、その後の最高裁の判断は、民法の条文を引用することなく、合意があったか無かったかという点にのみ重点を置いています。

そもそも、民法は、契約に具体的な取り決めや合意がなかった場合にも、不公平な結論が導かれないように解決策を用意するという性質があるのに、紛争の解決を、「紛争が生じた場合にはどうするかということについての具体的な取り決め・合意」に求める最高裁の見解には、とても違和感があります。


一般消費者というのは、将来のあらゆるトラブルを想定して取引をしているわけではなく、なんとなく取引を開始するものなので、一般消費者自らが、取引を行うことによって生じる紛争・不具合について事細かに契約書に定めるということは期待できません。

仮に、あらゆるリスクを想定して契約に臨んだとしても、契約書を作成するのは企業の方なので、将来の紛争について、消費者に有利な取り決めをできる可能性は、やはり期待できないといえます。

だとすれば、法律や法解釈によって、不公平な結論にならないような保護をすべきであると考えられます。

最高裁は、このような消費者軽視・合意重視の方針を、この原稿を書いている平成21年1月29日時点では改めていません。

日本の法曹界で、未だに残っている悪しき習慣、「主張しない者はどこまでも不利に扱われてもやむを得ない」っという裁判所特有の考え方は、是正されてしかるべきと考えられます。



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