作成年月日 平成21年3月12日 法令改正により、計算式などに変更がなされる場合もあります。
源泉徴収義務
司法書士、弁護士、税理士などの、いわゆる士業者に依頼をした場合、所定の源泉所得税額を差し引いた上で士業者に費用を支払ったうえで、その差し引いた源泉所得税を、翌月の10日までに代行して納付しなければならないという定めがあります(所得税法204条、国税庁「司法書士などに支払う報酬・料金」)。
しかし、士業者に依頼をした場合でも、費用から所得税を源泉徴収しないでよい者も合わせて定められています(結論だけ知りたい方は、ページ下段の「まとめ」を参照ください)。
まずは、条文の確認をします。
参考条文 所得税法(該当部分のみ抽出) (源泉徴収義務)
第二百四条 居住者に対し国内において次に掲げる報酬若しくは料金、契約金又は賞金の支払をする者は、その支払の際、その報酬若しくは料金、契約金又は賞金について所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月十日までに、これを国に納付しなければならない。
一 省略
二 弁護士(外国法事務弁護士を含む。)、司法書士、土地家屋調査士、公認会計士、税理士、社会保険労務士、弁理士、海事代理士、測量士、建築士、不動産鑑定士、技術士その他これらに類する者で政令で定めるものの業務に関する報酬又は料金
以下、三号から八号まで省略 2 前項の規定は、次に掲げるものについては、適用しない。
一 前項に規定する報酬若しくは料金、契約金又は賞金のうち、第二十八条第一項(給与所得)に規定する給与等(次号において「給与等」という。)又は第三十条第一項(退職所得)に規定する退職手当等に該当するもの
二 前項第一号から第五号まで並びに第七号及び第八号に掲げる報酬若しくは料金、契約金又は賞金のうち、第百八十三条第一項(給与所得に係る源泉徴収義務)の規定により給与等につき所得税を徴収して納付すべき個人以外の個人から支払われるもの
三 省略
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参考条文 所得税法(該当部分のみ抽出) (給与所得) 第二十八条 給与所得とは、俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与(以下この条において「給与等」という。)に係る所得をいう。 (退職所得)
第三十条 退職所得とは、退職手当、一時恩給その他の退職により一時に受ける給与及びこれらの性質を有する給与(以下この条において「退職手当等」という。)に係る所得をいう。 (源泉徴収義務) 第百八十三条 居住者に対し国内において第二十八条第一項(給与所得)に規定する給与等(以下この章において「給与等」という。)の支払をする者は、その支払の際、その給与等について所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月十日までに、これを国に納付しなければならない。
(源泉徴収を要しない給与等の支払者)
第百八十四条 常時二人以下の家事使用人のみに対し給与等の支払をする者は、前条の規定にかかわらず、その給与等について所得税を徴収して納付することを要しない。
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所得税法204条1項及び204条1項2号(前記条文のうち赤字部分)には、簡単にいうと、次のような定めが書いてあります。
「弁護士、司法書士等の業務に関する費用の支払いをする者は、その支払いの際に司法書士等への費用から所得税を徴収し、翌月10日までに国に納付しなければならない。」
しかし、所得税法204条2項には、司法書士等から源泉徴収をしないでよい場合を定めています。
具体的には、
@司法書士などに支払う費用の性質が、給与ないし退職金である場合は、その費用からは源泉徴収しないでよい(所得税法204条2項一号。前記条文のうち、青字部分)
※給与として司法書士などへ費用が払われた場合は、給与所得としての源泉徴収がされるからだと思われます。
A「個人事業主として他人を雇い、従業員から源泉徴収をしている人以外の個人」(←典型的には、誰かを雇う側ではなく、雇われ人に過ぎないサラリーマン)は、司法書士などから源泉徴収をしないでよい(所得税法204条2項二号。前記条文のうち、緑字部分)
※個人でなければ、源泉徴収義務は免除されていないので、会社等の法人が司法書士へ依頼をすると、源泉徴収義務が生じます。
っという二つの場合が定められています。
これらの例外を除いて、司法書士などへの費用からは、依頼者に源泉徴収義務が発生します。
つまり、法人は、204条2項に定める、源泉徴収義務のない場合に該当しないので、司法書士などに依頼をした場合は、司法書士などに支払う費用から、源泉所得税分を、司法書士などの代わりに国に納めなければならない仕組みとなっています。
また、個人事業主が司法書士などに依頼をした場合は、源泉徴収義務のある場合と、ない場合があります。
個人事業主も(人を雇っていれば)、所得税法204条2項に定める、源泉徴収をしないでよい場合に該当しないので、司法書士などに依頼をすると、源泉徴収義務があります。
しかし、個人事業主で人も雇っているのだけれど、「常時二人以下のお手伝いさんなどのような家事使用人だけに給与や退職金を支払っているに過ぎない人」は、司法書士などへの費用から、源泉徴収をして、代わりに納税する義務を免除されています(所得税法184条。前記条文のうちオレンジ色部分)。
このお手伝いさんのような家事使用人に該当するケースは、非常に狭く解釈されているようです(松戸税務署に聞いたところ、嫁さんをフルタイムで働かせるような場合は、「嫁さんは家事使用人とは認められない」=「家事使用人だけに給与を支払っているとはいえない」=「源泉徴収義務が生じる」、とのことです)。
そのため、フルタイムで働く嫁さんを一人だけ雇っているにすぎない個人事業主にも、司法書士などへ依頼をした場合の源泉徴収義務は課されるようです。
司法書士等に依頼をすると、依頼者には源泉徴収義務(税金を司法書士などに代わって納付する義務)が生じる。
したがって、会社等の法人が司法書士等に依頼をすると、源泉徴収の手続きが必要になる。
しかし、会社のような法人ではなく、かつ、誰かを雇っているわけでもない個人は、例え司法書士などに依頼をしても、源泉徴収義務はなく、税金を代行納税する必要もない。
次のテーマ 源泉徴収した所得税の納付方法や、金額計算
司法書士が作成する領収書の印紙貼り付けの要否
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